バイオトイレとは?バイオトイレの特徴や仕組み、メリット・デメリットをプロが解説!
水を必要とせず、汲み取り要らずの無臭トイレとして注目を集めている「バイオトイレ」。
ここでは、バイオトイレの仕組みから利用することのメリット・デメリット、どんなシーンにオススメなのかなど、バイオトイレの製造・販売を行うプロが、徹底的に解説します。
目次
バイオトイレは大きく2つに分けられます
バイオトイレは大きくわけて「無水式」と「水循環式」があります。
①無水式バイオトイレ
無水式バイオトイレは、水を使用せず、おがくずなどの担体を活用し、排泄物を担体に吸着させ、微生物の力を使って分解し、処理するタイプのバイオトイレです。
無水式バイオトイレには、微生物の住処となる「担体」が必要となります。担体には杉チップやもみがら、そば殻、おがくずなどがあります。
担体の種類によって吸水・吸着力が異なるため、バイオトイレメーカーによって担体を交換する時期や、定期的なメンテナンスのタイミングが異なります。
無水式バイオトイレは水が不要なため、水循環式と比べても場所を選ばず、電気や水道がない場所や下水道環境がない場所でも使用できます。
②水循環式バイオトイレ
水循環式のバイオトイレは、従来のトイレに似たかたちで、水を使って排泄物を排水層に流し、排水層内の微生物が排泄物を分解し、処理するバイオトイレです。
ほとんどの製品で「微生物剤」を使用し、処理タンク内を水循環させる必要があるため、電源の確保が必要です。また、最終的には汲取りが必要となり、汲み取り後は再度循環させる水と微生物剤を投入する必要があります。
水循環式バイオトイレは、普段利用している水洗式トイレに近い様式で使い慣れているという点や、臭いが少なく衛生的で清潔感があるという点から、多く利用されています。
※一般的に「バイオトイレ」とは「無水式バイオトイレ」を意味することが多いため、本コラムでは以降「バイオトイレ」=「無水式バイオトイレ」として詳しく解説していきます。
「バイオトイレ」とは?
バイオトイレとは、「人間の腸内バクテリアや自然に存在する微生物の力を使い、人間のし尿を分解・蒸発処理するトイレシステム」のことを言います。
水を使用しない洋式の落とし便器を用いて、し尿がバイオトイレ処理槽に投入されると、まず処理槽内で撹拌され、微生物の住処である担体と接触、付着します。
すると、尿はバイオトイレ処理槽に搭載されたヒーターによる蒸発や、処理槽内の撹拌による自然蒸発により処理され、大便は微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解されます。
※大便の80%は水分です。(参考元:トイレ研究所 加藤篤 代表「うんちはすごい」第1章より)
このようにバイオトイレは水を必要とせず、下水処理施設のような大規模設備が不要で、かつ浄化槽のように設置に大がかりな工事を必要としない、新しいオンサイト処理システム*として注目を浴びつつあるトイレ処理システムです。
*オンサイト処理システムとは、建物や施設などの現場(オンサイト)で、排水や排泄物をその場で処理するシステムのことを指します。人間の排泄物処理の分野では、浄化槽やバイオトイレなどが該当します。オンサイト処理システムは、下水道がない、または下水道に接続することが困難な場所での利用が主な目的です。
バイオトイレのメリット
バイオトイレにはさまざまなメリットがありますが、大きくは以下のような点が考えられます。
水が不要である
大きなメリットの1つが「水がいらない」という点です。
バイオトイレは便器に非水洗便器を採用することで、人間のし尿を、水を利用することなく直接バイオ処理槽へ投入することができます。また、微生物による分解処理も水に依存していないので、水が確保できない場所でのトイレ設置が可能になります。
臭いがしない
トイレで必ず話題になるのが「臭い」ですが、バイオトイレは水を使わずに微生物によって分解し処理するため、し尿が混ざった状態で溜まり続けることがありません。そのため、嫌な臭いがほとんどないのが特徴です。
バイオトイレは臭いがしないため、使用する人にとって快適なトイレ環境を提供することができ、室内や近隣住民が多いなどの屋外を問わず、さまざまな場所に設置することができます。
担体の堆肥化が可能
バイオトイレの担体には、微生物が分解できなかった栄養素(窒素・リン・カリウムなど)が含まれています。そのため、長期間使用したバイオトイレの担体は、良質な堆肥としての活用が可能です。
バイオトイレの担体を堆肥として活用することは、循環型社会に向けた取り組みとして、とても有益なことと言えます。
大がかりな設置工事が不要
バイオトイレは、一般的なトイレとは異なり、水を大量に使用する必要がありません。そのため、排水管や水道管を通す下水道工事も不要なので、基本的には据え置き設置タイプのものが多く、大がかりな設置工事が不要です。
汲取り作業が不要
バイオトイレは工事現場やイベントなどで見かける仮設トイレとは異なり、し尿をタンクに溜めないため、バキュームカーで汲み取りをおこなう必要がありません。
そのため、バキュームカーが入れない場所や、これまで汲み取りができなかった場所にもトイレを設置できるため、より多くのトイレ設置要請に対応することができます。
バイオトイレのデメリット
バイオトイレには多くのメリットがありますが、一方で次のようなデメリットもあります。
処理能力に限界がある
バイオトイレは、排泄物の処理能力(し尿を処理できる一日の回数)に限界があるため、イベント会場など、一度に集中して多くの利用者が集まる場所などには不向きです。トイレ設置を検討する際には、1日の使用人数や使用頻度などを事前に考慮する必要があります。
使用頻度を超え、排泄物が処理槽内に堆積したままになると、汲取り式のトイレと同じ状態になってしまい、悪臭が発生し、不衛生なトイレ環境を作り出してしまいます。
電源が必要
バイオトイレでは、担体の入った処理槽を定期的に撹拌することで、空気や水分の循環を促し、微生物が活性化しやすい環境を作りだしています。そのため処理槽内を撹拌するための電源の確保が必須です。電源がない場所では設置が難しいケースも出てきます。
電源使用の重要な要素は以下3つです。
- モーターによる「撹拌」
- ヒーターによる「温度管理」
- ブロアーによる「酸素供給」
※電源が確保できない(商用電力無し、発電機使用不可)場所でも、1年中温暖な場所や使用頻度の低い場所では、太陽光発電を活用してバイオトイレの利用は可能です。
担体の交換作業が必要
バイオトイレはし尿を溜めないので、汲取り不要なのですが、微生物の住処である担体の交換作業が必要になります。
交換作業頻度は担体に何を使用しているかによって変わります。おがくずであれば3〜4ヶ月、杉チップであれば2年程度が目安となります。
バイオトイレの価格相場は?
バイオトイレの価格は、1日40回〜50回処理できるタイプで300万円程度になります。
バイオトイレの価格は設置場所のインフラ条件、1日の必要処理回数によって異なりますので、見積を取って価格の相談をするのが良いでしょう。
バイオトイレはレンタルも可能
バイオトイレはレンタルすることも可能です。バイオトイレのレンタル会社は地域や都道府県によって異なりますが、全国的にも複数の会社が存在しています。一般的には、使用される期間によって料金が変わってくることが多いです。
バイオトイレのレンタルについて、もっと詳しくは下記をご覧ください。
https://mikalet.jp/column/1192/
バイオトイレは、どんなシーンで活躍するか
次に、バイオトイレがどんなシーンで活躍するかをご紹介します。
①国立公園、世界遺産、へき地
環境保全に力を注いでいる場所の中には、水環境がない場所も多く、また、地下水や水源を保護する必要もあるため、トイレの排水処理が問題視されます。
水を使わないバイオトイレは、下水道や水道がなくても設置できるため、国立公園や世界遺産、へき地の施設などでも利用されています。
「行政」への納品実績一覧
https://mikalet.jp/tag/administration/
②建設現場
建設現場でも、トイレの設置にあたって下水道や水道が整備されていないことが多いです。また、工事現場によっては、工事が進むにつれて現場の場所が変わるため、トイレを移動させる必要が生じることもあります。
こうした状況下においても、バイオトイレは水を必要とせず、移設も容易にできる為、建設現場で活躍の場が広がっています。さらに、臭いもほとんどないため、建設現場において男女ともに使いやすく、快適なトイレとして多く利用され始めています。
「建設現場」への納品実績一覧
https://mikalet.jp/tag/construction-company/
「快適トイレ」について
https://mikalet.jp/comfortable/
③離島、リゾートホテル
離島のキャンプ場や自然の美しさを活かした保養地、グランピング施設などでは、下水道環境が整っていない場所も多く、訪れた観光客のためのトイレ問題を解決できます。
「グランピング施設」への納品実績
https://mikalet.jp/voice/3828/
④農地、農村
農作業中のトイレとしても利用されています。バイオトイレで発生したし尿は適切に分解され堆肥化されているため、土壌改良剤として活用することも可能です。
⑤プラント、大規模工場
大規模なプラントや工場でトイレを増設する場合には、水道や排水工事の費用や浄化槽の放流規制がネックになることがあります。そのような場合、汲み取り不要で水道工事も不要、排水も無いバイオトイレが活躍します。
「シーバース」への納品実績
バイオトイレはSDGsにも該当
国連が、2030年までに達成すべき国際社会共通の17の目標として掲げている、持続可能な開発目標「SDGs」。
人権や経済、地球環境などさまざまなテーマで17の目標が掲げられていますが、バイオトイレはそのなかで、以下4つの項目に該当します。
SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」
SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」は、世界的な水不足問題やトイレの衛生面での問題を解決することを目的に、2030年までに安全で衛生的なトイレを全世界に提供することを目指したものです。
バイオトイレは、水が十分に得られない地域や、浄化槽を含む下水処理施設の無い場所においても、排泄物を適切に処理することができるため、SDGs目標6において役割を果たしています。
SDGs目標12「つくる責任、つかう責任、捨てる責任」
SDG 12「つくる責任、つかう責任、捨てる責任」とは、持続可能な消費と生産に向けた取り組みを促進するための目標です。具体的には、資源の効率的な利用、廃棄物の最小化、環境負荷の低減、化学物質の安全な管理、環境に配慮した製品の開発や消費者による持続可能な生活様式の推進などを目指しています。
バイオトイレは、環境に優しいトイレであると同時に、排泄物を良質な堆肥として再利用することができるため、循環型社会の実現に貢献することができます。
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」では、水質汚染や海洋プラスチックの問題に取り組むことが求められています。
バイオトイレは、自然界に存在する微生物の力により排泄物を適切に処理することができます。そのため、化学物質や有害物質の放出を防ぎ、海洋環境の保護に貢献することができます。また、海に排泄物を垂れ流すことを防止するため、水質汚染の問題にも対処することができます。
SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」
SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」では、生物多様性の保全や砂漠化の防止など、陸地の環境保全が求められています。
バイオトイレを活用することにより、これまでトイレ設置が困難な場所、例えば富士山のような人の集まる自然観光地に衛生的なトイレ環境を作ることができます。バイオトイレは自然観光地に対する人間のし尿による悪影響を減らし、陸地環境保全の一助となることができます
ミカサのバイオトイレが世界を渡る
https://mikalet.jp/developing-country/
バイオトイレの選び方
弊社を含め全国各地にはバイオトイレを扱う会社が複数社あり、選ぶ側としては何を基準にして選んだらよいのか迷われると思います。
バイオトイレを選ぶ際は、以下のポイントを事前に考え、ご希望に沿ったバイオトイレを選ぶことをおすすめします。
- そもそもバイオトイレの種類にはどんなものがあるか?
- トイレ設置場所のインフラ条件はどうなっているか?
- トイレ使用回数は1日何回くらいか?
- メンテナンスの内容と費用を把握しているか?
- 購入したいのか、レンタルしたいのか?
詳しくはコラム【目的や環境に合った、最適な「バイオトイレ」の選び方】をご覧ください。
https://mikalet.jp/column/4125/
ミカサのバイオトイレ【バイオミカレット®】とは
㈱ミカサのバイオトイレ【バイオミカレット®】は、今回お話ししたバイオトイレのなかでも『無水式』のバイオトイレにあたるもので、「杉チップ」を担体とし、し尿を分解処理します。
弊社が、バイオトイレに欠かせない担体に杉チップを使っている理由としては、処理能力に準じた利用頻度であれば、メンテナンスの頻度が2〜3年に一度と長期間でよい点です。
弊社独自の研究を重ね、トイレを利用しやすくするという点だけでなく、維持・管理のしやすさ、環境への配慮などを追求した結果、杉チップを採用しています。
下水道や浄化槽のない環境にこそ【バイオミカレット®】が活躍
「多くの人に足を運んでもらいたいけれど、下水道や浄化槽設備がないためトイレが設置できない」とお困りであった国立公園や史跡、国指定重要文化財のある場所、リゾート地などで【バイオミカレット®】は利用されています。
電源が確保できない場所には、太陽光発電システムを使って電力を確保することができるのも【バイオミカレット®】の特徴のひとつです。
景観を損なわず自然にも配慮した外観
また【バイオミカレット®】は、水環境がない場所でも臭わず清潔なトイレが設置できるという点で選ばれるだけでなく、見た目の良さも指示される理由のひとつです。
木目調の落ち着いたテイストで、周囲の自然環境にもマッチした造りとなっています。
利用したい目的や予算によって最適なバイオトイレを提案します!
今回はバイオトイレの仕組みから、活躍するシーンなど、バイオトイレとはどういうものなのかをお伝えさせていただきました。
しかし検討をされている場所に、どんなトイレが最適なのかはなかなか判断がつかない部分も多いかと思います。
弊社では、目的や用途、環境、ご予算などさまざまな要素をお伺いして、最適な製品の提案をいたしますので、お気軽にご相談ください。
株式会社ミカサは、1989年に創立してからトイレの研究を続け、特許を取得した「燃焼式トイレ ミカレット」は世界遺産に認定された富士山に設置され、し尿の垂れ流しの問題解決に貢献してまいりました。
2004年よりバイオトイレの製造に着手し、その後20年以上にわたり、バイオトイレの製造から販売・レンタルを行っています。
2015年には日本国政府のODA事業にミカサ製バイオトイレが採用され、ペルー共和国へ納品、2017年にはカメルーンへ納品するなど、日本を代表するバイオトイレメーカーです。
開発途上国のトイレ環境・公衆衛生の研究者、京都大学・原田准教授とともに、バイオトイレの研究開発も行っています。