自己処理型トイレと貸倉庫 二本柱を軸に海外への第一歩を踏み出す
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創造おおいた2014年版/2014年10月月掲載
環境に配慮した自己処理型トイレの研究開発を長年行っている、大分市の株式会社ミカサ。燃焼式トイレ「ミカレット」、バイオ分解式トイレ「バイオミカレット®」を開発し、販売及びレンタルで実績を伸ばしている。国内では富士山への設置で注目されるほか、今年は国の政府開発援助(ODA)事業を通して、ペルーにバイオミカレット®を納品。世界を視野に入れた取組が始まっている。
燃焼式からバイオ分解式へ
平成元年創業の株式会社ミカサ。建設会社向けにレンタル事業を行う中、創業者である三笠髙志前社長が環境に優しい自己処理型トイレに着目し、平成6年に燃焼式トイレ「ミカレット」を発売した。
「先代が苦労を重ねて開発したミカレットはトイレ事業の原点。燃焼式トイレは今も当社製以外になく、特許も取得しています」と話すのは、父親である先代の思いを継承して今年7月、新社長に就任した三笠大志社長だ。
「ミカレット」は灯油を燃料に、汚物を回転させながら蒸発・乾燥・焼却して汚物を処理するシステム。1時間で50人分の溜まった汚物を全て灰にする。
やがて、三笠社長が入社した平成17年頃から、社としては後発だったバイオ分解式トイレを開発。「バイオミカレット®」として発売し、今では主流となっている。
排泄物の水分を杉チップなどの担体が吸収。内臓ヒーターで温めながら攪拌して酸素を取り込み、活性化した微生物が水と二酸化炭素に分解する。下水設備や浄化槽の設置が困難な場所、観光地(富士山、北アルプスなど)や自治体が管理する公園、登山道(入り口、駐車場)などで設置が進んだ。
「現在、収益の大きな柱は『バイオミカレット®』のレンタル事業で、100台ほど設置しています。使用人数を把握して最適なタイプをご提案します。通常の汲み取り式仮設トイレに比べると価格は高いですが、一度気に入っていただくと、また使っていただける。リピーターが多いですよ」
「バイオミカレット®」は平成19年、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS(ネティス))の認定を受けた。 知己のメーカーが開発した移動式全自動水洗トイレ「ウォータス」も九州総代理店として取り扱うが、こちらもNETIS認定を受けた製品となっている。
富士山やペルーにも進出
当社の燃焼式トイレ「ミカレット」は富士山頂で使用されたことで大きな注目を集めた。 「先代社長の知人である神社の宮司さんを通じて話がつながり、富士山に設置されることになりました。2か月で30万人以上が訪れる富士山頂では処理能力に限界のあるバイオトイレでは処理できないので、燃焼式トイレを設置しています」 県内でも九重森林スキー場や自衛隊湯布院駐屯地などに設置されている。
さらに今年、「バイオミカレット®」がペルーに出荷されることになった。外務省のが威嚇団体JICS(ジックス)(日本国際協力システム)が実施する政府開発援助(ODA)事業によるもので、商社との連携で受注が実現した。
「TPPや年末にペルーで開かれる地球温暖化に関する国連会議(COP)との絡みもあって、ODA事業として具体化したようです。たまたま当社を選んでくれた商社が落札して運良く採用が決まりました」
年末までにペルーに向けて16台の「バイオミカレット®」を納品する予定で、田ノ浦工場から横浜の倉庫に3回に分けて発送される。現地には設置の段階で赴くという。
「先方の要望で攪拌を緊急停止するボタンを付け、電球の口金規格をペルー仕様に合わせるなど、ペルー用にカスタマイズしました。今後、どんな広がりを見せるか未知数ですが、世界への第一歩として期待しています」。
長く継続する強い会社に
当社のもう一つの柱である貸し倉庫事業には、平成12年頃から県下で初めて取り組み、現在17店舗を展開。最短1カ月からのレンタルが可能で、24時間出し入れ自由。様々な用途で、個人や個人事業主に活用されていて好評だ。
「トイレのレンタル事業と貸倉庫事業、この二本柱がなければ富士山もペルーもなかったですよ」
今年36歳の三笠社長。団塊と呼ばれる親世代からジュニア世代へと世代交代の波が押し寄せいるのを感じるという。しかし、プレッシャーはあまりない。
「いつか父の事業を継ぐという意識を持っていました。私の場合、『3年後にお前に渡す』と言われていたので心の準備もできていました。父からは仕事に対する姿勢を教わりましたね。先代は創業以来ずっと、いろいろな困難を乗り越えながら信頼を築き上げてきました。吸収すべきことは多いです。今も父は相談役として残っていますので、いつでも相談できるのは恵まれた環境です。ありがたいですね」
家族の存在は精神的な基盤。家族のおかげで新たな挑戦ができる
会員となっている中小企業同友会の三つの目的にある「良い会社、良い経営者、良い経営環境」を目指す。
「基盤をしっかり守り、長く継続できる強い会社にしたい。トイレ部門は今後更におもしろくなりそうですね。個人的なモットーは『楽しい人生』」。
「新しい仕事に挑戦するには、安定した収入、経営基盤が必要だと思います。でないと『挑戦』が『博打』になってしまします。そして仕事に集中して挑戦していくには、良い精神状態、僕の場合家族の存在が欠かせません。楽しい人生、充実した人生を過ごすために、基盤である家族を大切にし、これまで以上に仕事に集中し、新しい挑戦もしていきたいと思います。」