株式会社ミカサ

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【大分銀行発行】おおいたの経済と経営 (我が社を語る)に掲載されました。

おおいたの経済と経営_インタビュー①
おおいたの経済と経営_インタビュー②
おおいたの経済と経営_インタビュー③
おおいたの経済と経営_インタビュー④
おおいたの経済と経営_インタビュー⑤
おおいたの経済と経営_インタビュー⑥

ミカサは、バイオミカレット®をはじめとする自己処理型トイレの製造・販売・レンタルを主な事業として展開している企業です。国内では下水道が整備されておらず、浄化槽の設置が困難な富士山や熊野古道をはじめとする観光地、山岳地域で導入されています。また、同社はメイドイン大分の自己処理型トイレを海外へ売り出し、特に発展途上国のトイレ環境の整備に貢献しいます。今回は事業内容と課題、今後の展望についておうかがいしました。

聞き手

大分銀行 日岡支店
支店長 渡辺 剛之

ピンチをチャンスに、独自商品の開発に着手

―まず、創業について教えてください。

三笠:当社は個人で建設現場の仮設事務所の建設や仮設トイレのレンタル事業を手掛けていた私の父が、平成元年に法人化し、現在に至っています。法人設立後まもなくバブル景気が崩し公共工事や民間の建設工事が伸び悩んだことから、景気の好不況の波に影響されにくい独自の商品開発の必要性を痛感し、自己処理型トイレ商品の開発に取り掛かりました。

 私は小さな頃ら、先代社長である父の働く姿を傍で見ており、将来的には後を継ぎたいと考えていました。そこで後を継ぐことを前提に、学生時代に海外へ留学し、大学卒業後は東京のベンチャー企業に就職し、営業のノウハウを習得するなど、様々な経験を積みました。そうした経験を踏まえ、平成17年に当社に入社して、平成26年より代表取締役を務めています。当社は従業員6人の小さな会社ですが、事業内容は非常に特異で、事業を通じて地域の抱える課題解決に役立つ企業であり続けることを目指しています。私は社長就任以降、従業員に常々、当社で働くことによって「楽しい人生」を送ろうと話しています。従業員1人1人が仕事を通じて社会に貢献することで、私たちを取り巻くお客様や地域の方々から必要とされ、喜ばれるとともに、従業員とその家族は、物心両面の豊かさを得ることができ、「楽しい人生」を送ることができます。その実現に向け、社員一丸となって日々努力しています。

自己処理型トイレと貸し倉庫の2本柱

―事業内容や商品の特徴を教えてください。

三笠:当社の事業は、大きく分けて2つあります。1つは自己処理型トイレの製造・販売・レンタル事業、もう1つは貸し倉庫事業です。自己処理型のトイレ事業では、主に燃焼式トイレ「ミカレット」とバイオ分解式トイレ「バイオミカレット®」を取り扱っています。燃焼式トイレのミカレットは灯油を燃料とし、汚物を回転させながら蒸発・乾燥・焼却する汲み取り不要のトイレです。1時間で50人分の汚物を処理でき、燃えるものは全て灰となります。1,000回使用しても出る灰は数百グラムと処理能力が高く、悪臭が発生しない環境に配慮した商品です。しかしながら、まだ商品としての完成度が十分でない時期に販売し、全台返品されるという苦い経験もあります。その後、多くのサポートをいただきながら不具合を洗い出し、改良を重ねて現在の商品を完成させることができました。

 燃焼式トイレを製造・販売している企業は全国でも当社だけで、平成9年に特許を取得しています。処理能力に優れ、環境配慮型商品であることが高く評価され、南極昭和基地や富士山山頂でも導入されています。

 近年、より需要が高まっているのがバイオ分解式トイレのバイオミカレット®です。同商品は排泄物の水分を杉チップなどの担体に吸着させ、ヒーターで温度管理しながら処理槽内をかき混ぜ、酸素を取り込み、活性化した微生物が固形物を水と二酸化炭素に分解し、水分が蒸発するという仕組みです。同商品の特徴は、水で流したり汲み取ったりする作業が不要で、悪臭が発生しないことです。また、基本的に稼働に必要なものは電源のみであり、メンテナンスも年に1回程度の使用機器の動作チェックと、2~3年に1回程度の杉チップなどの担体の入替作業だです。そのため、ランニングコストを抑えることができることも特徴として挙げられます。

 もう1つの柱である貸し倉庫事業は、平成12年頃から事業化しており、当社は大分県内で初めて貸し倉庫業を営んだパイオニア企業です。現在では大分市を中心に、18店舗を運営しています。貸し倉庫の利用者は一般の個人客がメインであり、住宅の建替時の一時的な保管場所や物置として利用されることが多く、年々ニーズは高まっています。貸し倉庫事業は売上の約4割を占めており、当社にとって欠かすことのできない事業です。

処理能力とレンタル事業で差別化

―全国的にみても、バイオトイレ事業に取り組む企業はあまり多くないのではないのでしょうか。

三笠:国内でバイオトイレ事業を主要事業としているのはいずれも中小企業の5社程度であり、非常にニッチな市場です。その中で、当社は高い処理能力とレンタル事業によって他社との差別化を図っています。

 まず、処理能力については、通常のバイオトイレの場合、処理槽が1階層で、水分過多状態になりやすく、微生物の分解能力が低下してしまいます。当社のバイオミカレット®は処理槽が2階層となっているため固液分離が実現でき、他社製品と比較すると、水分過多状態になることが少なく、高い処理能力を誇っています。こうした自社製品の基礎となる技術力を向上させるために、これまで大分工業高等専門学校や東海大学などとの共同研究を積み重ねてきました。

 また、国内でバイオトイレを主要事業とする企業の中でレンタル事業を展開しているのは当社だけです。当社におけるバイオトイレをはじめとする自己処理型トイレの販売台数は年間を通して3~4台程度と、それほど多くはありません。販売以上にレンタル需要が高く、100台程の自己処理型トイレを建設現場などに貸し出しています。従来は、国や県からの公共工事を受注している企業を対象としていましたが、最近は民間事業へのレンタル実績も増えてきました。公共工事の場合、年度末に工事が集中し貸出時期も特定期間に集中する傾向がありましたが、新たなレンタル先を確保することで、年間を通じて安定した需要を得ることができるようになりました。

 利用者の立場からみると、レンタルは初期投資を抑えることができるため、気軽に利用することができます。当社としては、自己処理型トイレをレンタル利用してもらうことで、利用者のニーズを拾い上げ取引を拡大させるとともに、利用者の口コミ・情報共有による新たな顧客の獲得を目指しています。

富士山の世界文化遺産登録に貢献、従業員のモチベーションも向上

―御社の商品は富士山でも導入されていますが、導入のきっかけについて教えてください。

三笠:大分市内に護国神社があります。護国神社の宮司さんが以前、富士山の頂上にある浅間大社にいらっしゃったというご縁で、当社の自己処理型トイレを紹介していただいたことがきっかけです。

 当社のトイレが導入されるまでは、登山客のし尿はタンクに溜められ、山小屋が閉鎖される9月中旬頃に周辺にそのまま廃棄されていました。そのため富士山周辺には悪臭が漂い、岩肌にトイレットペーパーがこびり付く「白い川」と呼ばれる深刻な環境問題を抱えていました。そこで、環境省は補助金制度を充実させ、自然環境の保護・整備に重点的に取り組み、40軒ほどある山小屋の3分の1の施設に、当社の自己処理型トイレを設置することとなりました。2ヵ月半ほどの期間に約30万人もの登山客が利用する富士山では、より高い処理能力が求められていることから、燃焼式トイレを設置しています。

 平成25年6月、富士山がユネスコの世界文化遺産に登録されました。当社の自己処理型トイレが富士山の環境保全に貢献できたことが嬉しく、私だけでなく、従業員のモチベーション向上にもつながっています。

―御社の商品を導入されている利用者の反応はいかがですか。

三笠:当社の自己処理型トイレは山間部のような、水が確保できず、下水道設備の無い場所や浄化槽を設置できない建設現場などでよく導入されています。例えば、立地条件から水洗トイレの導入が難しく、男女兼用の汲み取り式トイレを使用していた工場でバイオトイレを導入したという事例があります。導入後は、男女別々のトイレとなり、汲み取り式トイレ特有の臭いがなくなったことから、従業員の皆様から喜ばれています。

 また最近では、富士山の導入実績をはじめメディアに取り上げられる機会が増えています。既存の利用者による口コミのほか、メディア掲載をきっかけに、当社のホームページ(HP)を見てお問い合わせいただくことも多くなっています。そのため、当社では自社HP の改善に取り組み、今年9月にリニューアルしました。今回のHP リニューアルでは、特に商品の特徴や導入実績などを分かりやすく伝え、取引につなげることを意識しました。今後もHP を通して、当社の取組や業界情報を積極的に発信していきたいと考えています。

建設業における女性活躍の推進、ビジネス拡大の好機

―建設現場では人手不足が深刻となり、国を挙げて女性の活躍促進に取り組んでいますね。

三笠:建設業では、従事者の高齢化や若手人材の不足が顕著で、将来の担い手の育成・確保が喫緊の課題となっています。こうした状況下で、国土交通省は、女性が建設現場で活躍できるような取組を進めています。女性の活躍促進は、新たな労働力の確保とともに、建設現場に女性目線を取り入れることでマーケットの拡大など業界に新たな活力や需要の拡大をもたらす点でも期待されています。

 国土交通省は雇用の維持・継続に向けた職場環境の整備として、長時間労働の縮減や計画的な休暇取得に向けたソフト面の整備とともに、トイレや更衣室などのハード面の整備を挙げています。その一環として、男女ともに快適に使用できる仮設トイレを「快適トイレ」と名付け、平成28年10月以降に入札手続きを開始する国直轄の土木工事から導入することを決定しました。当社としては自己処理型トイレを全国各地へのレンタルビジネスのチャンスと捉え、営業を強化し、レンタル事業の拡大を目指します。

ODA を活用し、自己処理型トイレを大分から海外へ

―近年、海外事業にも積極的に取り組まれていますね。

三笠:当社では、数年前から海外事業に取り組んでいます。国内での導入実績が評価され、国の政府開発援助(ODA)事業の調達部門を担う一般財団法人日本国際協力システム(JICS)ら、ペルー共和国に自己処理型トイレを設置することができるか問い合わせがあったのがきっかけです。当社は商社と連携してその事業の入札に参加し、バイオトイレを大分県から輸出することができました。その結果、同国内のパラカス国立自然保護区などの観光地に16台設置しています。

 一般的に国内製品を海外へ輸出する場合、輸出先の文化や習慣にあわせて製品を現地仕様にカスタマイズする事例が多くみられますが、当社のバイオトイレの場合は国内で販売しているものと同じ仕様で通用します。違いを敢えていうならば、設備の盗難防止を強化しているぐらいです。

 ODA 事業にも様々な種類があります。今回の場合、日本国政府が当社の商品を購入し、それを相手国に納入するという仕組みです。このタイプのODA 事業では、商社を通して販売し、置やメンテナンスに関しても現地代理店が対応しているため、当社としては一定のノウハウを提供するだけで、海外への輸出事業といっても負担やリスクは大きくありません。

 現在、海外事業の第2弾として、大分市内の企業2社とともに新会社を設立し、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する「中小企業海外展開支援事業(普及・実証事業)」に取り組み、カメルーン共和国での自己処理型トイレ事業の普及を目指しています。他社が東南アジアをターゲットとしていたため、当社はアフリカに目を向けました。当社の先代が旧中津江村村長の坂本休さんとのご縁のおかげで、駐日カメルーン共和国大使館の協力も得られ、県内初のJICA認定事業として計画を進めています。

 カメルーン共和国では、首都ヤウンデのホテルや市庁舎では水洗トイレが整備されていますが、少し郊外に行くと、地面に穴を掘っただけの状態であり、衛生環境はあまり良くありません。そのため、処理能力が高く環境に配慮した当社の自己処理型トイレの現地でのニーズは高く、視察に行く度に期待の大きさを実感しています。計画では首都ヤウンデの大通りやヤウンデ第一大学で設置される予定です。ただし、カメルーン共和国における普及・実証事業では海外進出・拠点開設が前提となっており、より慎重に取り組む必要があると考えています。

時代のニーズにあった商品開発・事業展開を

―最後に今後の展望について教えてください。

三笠:今後も引き続き、自己処理型トイレ事業と貸し倉庫事業を軸に堅実に経営していきたいと考えています。幸いにも、自己処理型トイレ事業の認知度は高まりつつあります。また、国が建設業への女性進出を後押ししていることもあり、建設業での一層の普及が見込まれます。従って、まずは国内事業に力を入れていきます。

 しかし、事業を加速する上で乗り越えなければならない課題もあります。1つは新商品開発です。東日本大震災や熊本地震を経て、災害用トイレを開発してほしいとの要望が多くなりました。現状のバイオトイレでは、避難時の人数に耐えうるトイレとしては処理能力をはじめ課題が多く、技術力を向上させる必要があります。

 また、メディアに取り上げられることも多くなりましたが、依然として当社の自己処理型トイレの認知度はまだまだ低く、情報発信・営業の強化に取り組む必要があります。

 当社の使命は国内外の観光地や建設現場などのトイレ環境・衛生面の改善に向けて、自己処理型トイレをソリューションとして提供することであり、今後一層、お客様や地域に必要とされ、ともに成長していきたいと考えています。


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