バイオトイレとSDGs|一般社団法人国際エデュテイメント協会様とのコラボレーションによる教育の可能性
この度、株式会社ミカサのバイオトイレが、一般社団法人国際エデュテイメント協会様のSDGs探究プログラム「クリティカル」に採用されました。これは、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献と教育内容の充実を目的とした、両社の協働から生まれたプロジェクトです。
きっかけは偶然の出会い、そして共感
昨年、国際エデュテイメント協会様でSDGs関連の教材制作を担当していた原田氏は、情報収集のためにWeb検索を行う中で、ミカサのバイオトイレと出会いました。
「水も汲み取りも不要なトイレ」というバイオトイレの技術と、ミカサの取り組みに興味を持った原田氏は、上司の森氏に相談。森氏もまた、社会貢献とビジネスを両立させようとするミカサのビジョナリーな姿勢に深く共感し、弊社にコンタクトを取ってくださったことが、今回の教材化プロジェクトのきっかけとなりました。
ミカサのバイオトイレ:水とトイレの課題への挑戦
ミカサは、水を使わずに人間のし尿を処理できるバイオトイレ(バイオミカレット®)の開発・販売を通して、世界の水とトイレに関する課題解決に挑んでいます。特に、上下水道などのインフラが整っていない地域において、衛生的なトイレ環境を提供することで、人々の健康と生活の質向上に大きく貢献しています。
ミカサの挑戦は、単なる製品販売だけにとどまりません。
- 2014年にはODA事業に参画し、ペルー共和国の国立公園や自然保護区にバイオトイレを設置。
- 2017年にはJICA支援事業を通して、カメルーン共和国の首都ヤウンデ市とヤウンデ第一大学にバイオトイレを設置しました。
これらのプロジェクトを通して、ミカサは発展途上国のトイレ環境改善に大きく貢献し、同時に、地方の中小企業として国際的なプロジェクトに携わるという貴重な経験を積むことができました。
▼ミカサのバイオトイレが世界を渡る
https://mikalet.jp/developing-country/
教材「クリティカル」に込めたメッセージ
国際エデュテイメント協会が開発したSDGs探究プログラム教材「クリティカル」は、高等学校で行われる、教科や科目の枠を超えた横断的・総合的な学びの時間である「総合的な探究の時間」という授業で活用されています。この教材は、生徒たちが社会課題と自身の興味関心を結びつけながら探究活動を進めていくことを支援するために開発されました。
ミカサのバイオトイレは、「クリティカル」の中で、SDGsのGoal 6「安全な水とトイレを世界中に」を学ぶための事例として取り上げられています。
日本では当たり前のように水洗トイレが普及していますが、世界にはトイレがない生活を送っている人々がまだ多く存在します。ミカサのバイオトイレは、そうした人々にとって、衛生的なトイレ環境を手に入れるための有効な手段となり得ます。
さらに、この教材を通して生徒たちに伝えたいのは、SDGsの取り組みの難しさと重要性、そして「当たり前」を疑う"批判的思考"の大切さです。
「SDGsって素晴らしい目標だけど、実際に達成するのは本当に難しい。きれいごとだけじゃ済まない現実がある」
国際エデュテイメント協会の森氏は、弊社との複数回にわたる打ち合わせを通じて教材制作を行う中で、改めてその難しさを感じたと言います。だからこそ、ミカサのこれまでの挑戦、そして「当たり前」を疑い、現実と向き合いながら理想を追求し続ける姿勢を、高校生たちに伝えたいとおっしゃっていただきました。
▼SDGsオンライン探究プログラム「クリティカル」
https://www.iueo.or.jp/criticaljp
バイオトイレを通して「当たり前」を疑う"批判的思考"の大切さ
「プラスチックは悪だ!エコバッグを使えば環境に優しい!」
こうした風潮も、本当に正しいのでしょうか?
私たちが普段何気なく利用しているものも「当たり前」という視点で見直してみると、新たな課題が見えてくることがあります。
例えば、日本の一般的な水洗トイレは、多量の水を使用することが当たり前となっています。しかし、そもそもなぜトイレには水が必要なのでしょうか?
ミカサのバイオトイレは、この「当たり前」に疑問を投げかけます。水を使わずに人間のし尿を処理できるバイオトイレは、私たちに「なぜトイレには水が必要なのか?」という疑問を投げかけ、水を必要としないトイレの存在に気付くキッカケとなります。
ミカサの教材は、高校生たちに、こうした「当たり前」を疑う力を養ってほしいという願いも込めて制作されています。
一般社団法人国際エデュテイメント協会様について
一般社団法人国際エデュテイメント協会様は、2018年6月に設立され、英語によるアクティビティを通じて国際的な子どもを育成する理念をもとに、楽しみながら英語を学べる環境を構築することを目的として設立されました。
その後、2020年には英語教育のみならず、この時代の国際社会で生きるために必要な力を身につけられる事業を目指すべく、ミッションを改め「今、これからを生きる力を。」とし、様々な事業を展開しています。
現在は主に中高生向けに教材を開発する「次世代コンテンツ事業」、教員や教育委員会向けにICT研修やコンサルティングなどデジタルを活用した学びを推進する「まなびDX事業」、学校法人や教育関連企業向けに広報・PR支援をする「教育プロデュース事業」の3つの領域で事業を展開しています。
「次世代コンテンツ事業」では、現時点で累計約20校、1,500名程度に展開をしてきました。特に当事業においてSDGs教材(日本語版『クリティカル』、英語版『Thinking Critically about SDGs』)を開発しており、本教材を利用する90%の生徒が「論理的思考力」や「批判的思考力」の向上を実感するといった結果が出ています。
また、「まなびDX事業」では、累計で300自治体以上に対してICT研修を実施し、参加者の92%が「満足」と回答する評価を受けています。
※以下では、一般社団法人国際エデュテイメント協会の原田様からのコメントをご紹介します。
今回教材化した「クリティカル」という探究プログラム教材を開発した背景や狙いは何だったのでしょうか?
SDGsオンライン探究プログラム「クリティカル」は、「総合的な探究の時間」という授業で活用されています。この授業は、2022年4月から新しく始まった科目です。
数学や社会、理科など教科で学習したことを横断的に活用し、生徒の個々人の興味関心と社会課題を関連づけながら探究活動をしていく目的で設置されました。他の教科学習と比べると、比較的自由に授業を展開できる一方で、教師の授業準備が増えたり、探究活動を効果的に進めていくための方法がわからなかったりしています。
このような背景から、これまで英語教材として開発・提供していた「Thinking Critically about SDGs」の日本語版として「クリティカル」を開発し、2023年4月から本格的に展開をスタートしました。
▼SDGsオンライン探究プログラム「クリティカル」
https://www.iueo.or.jp/criticaljp
この教材を通して生徒に身につけてほしいスキルや価値観とは?
本教材を通して身につけて欲しいスキルは、主に「論理的思考力」と「批判的思考力」です。
国際的な機関であるUNICEFやOECDをはじめ、多くの団体が提唱するこれから必要なスキルとして「論理的思考力」と「批判的思考力」があげられています。テクノロジーの進化や社会情勢の変化が激しく、未来の予測困難なVUCA時代と言われています。
これらのスキルを身につけることで、世の中の変化を敏感に察知し、今までの前提を改め、これからの社会のあるべき姿を見極め、行動できる人になって欲しいと願っています。
今後のビジョンを教えてください。社会や教育システムに対して今後どのような役割を果たしていきたいと考えていますか?
弊団体のビジョンは、「今、これからを生きる力を。」です。
誰もが、今、そしてこれからを豊かに生きていくために必要な学びの環境を構築するために、様々な教育事業を展開していきたいと考えています。弊団体は、一人一人が豊かに生きるために必要な力をいつでも、どこでも学べる環境を構築する潤滑油のような立ち位置になりたいと考えています。
教育システムには、児童生徒(学生)、保護者、先生、学校、教育委員会、地域、企業など様々なセクターの人々が複雑に絡まっています。例えば、どんなに良い教材があり、担当の先生が興味を示してくれたとしても、他の先生の理解やリテラシー、検討する時間、保護者の理解、他教科との兼ね合いによる予算面での捻出、など非常に多くのハードルがあります。そして、それぞれの領域で根深い社会課題を抱えています。
こうした状況において、全体の教育環境を良くしていくには、一つのプロダクト、一つのアプローチではなく、様々な企業や団体と協力しながら、複合的にアプローチをしていく必要があると考えています。このような理由から、生徒向けには教材開発、先生向けにはDX支援、法人向けには広報支援、といったような展開を現在はしています。
今後も教育の根深い課題に弊団体がいる、というような立ち位置として事業を推進したいと考えています。
ミカサのバイオトイレを教材に取り入れた経緯と、その際に期待されていた効果は何でしたか?
弊団体の教材は、SDGsの各ゴールで貢献する企業や行政、教育機関等の方々にインタビューをし、教材化をするプロジェクトをしています。
Goal 6の「安全な水とトイレを世界中に」において、特徴的な活動をされている企業を探していた折に、御社を見つけました。日本は、トイレ設備が整っている国です。だからこそ当たり前のように綺麗なトイレを使っている日本人は、このインフラの素晴らしさに気づいていない側面があると感じていました。
今回、御社のバイオトイレを教材のテーマとして取り扱わせていただくことで、当たり前にあるトイレは多くの努力によって成り立っていることや、トイレの仕組み、社会的にどのような影響があるのか、またビジネスと社会貢献のバランスの難しさ、を考えるきっかけになって欲しいと思い教材化プロジェクトの打診をしました。
教材としてバイオトイレを選んだ最大の理由は何ですか?SDGsの理解促進にどのような価値があると考えますか?
上の部分と重複してしまいますが、当たり前のように綺麗なトイレが整備されている日本において、トイレを再考することによって「当たり前ではないことを認識すること」、そして海外におけるトイレ設置事情を知り、「視野を広げて考えるきっかけを作ること」がバイオトイレを選んだ最大の理由です。
また、本教材の一番のコンセプトである「批判的思考」を働かせ、水やトイレ問題から、貧困、飢餓、教育など他のSDGs Goalへの関連づけをしながらSDGsの本質を考えて欲しいと考えています。
バイオトイレを通して、未来への希望を育む
今回の教材化プロジェクトを通して、私たちミカサはバイオトイレを単なるトイレとしてではなく、教育教材としての新たな可能性を見出すことができました。
「当たり前」を問い直し、批判的思考を育むという教材のコンセプトは、まさに私たちがバイオトイレの普及活動を通して目指していることと重なります。国際エデュテイメント協会様との協働を通して、SDGs教育、そして持続可能な社会の実現に貢献できることを大変嬉しく思っています。
もちろん、バイオトイレの普及には、コストや人材不足など、まだまだ多くの課題が残されています。しかし、今回の教材化をきっかけに、より多くの人々にバイオトイレの可能性とSDGsへの理解を深めていただけることを期待し、これからも挑戦を続けてまいります。