株式会社ミカサ

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大分大学経済学部「イノベーション科学技術論」にて登壇させていただきました。

2024年11月25日、大分大学経済学部の「イノベーション科学技術論」の講義にて、「小さな会社がイノベーションを実現するための条件とは」というテーマで登壇させていただきました。

この講義は、学生の皆さんに、イノベーションを生み出し、それを継続していくために必要な心構えや実際の取り組みを共有することを目的としたものです。

バイオトイレのミカサ_大分大学経済学部イノベーション学科_登壇2

はじめに

株式会社ミカサの代表取締役である私、三笠大志は、これまで自己処理型トイレの開発や国際市場への挑戦など、さまざまなイノベーションに取り組んできました。

この講義では、私たちが直面した課題やその解決策を具体的にお話しすることで、学生の皆さんに将来どのようにイノベーションを実現していくべきかを考えるきっかけを提供したいと思い、お話しさせていただきました。

講義内容

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まず、ミカサの主力製品である自己処理型トイレ「ミカレット」と「バイオミカレット」の開発経緯、そして富士山や南極昭和基地など、過酷な環境下で使用されている実績を紹介する動画を学生たちに見ていただきました。実際に映像で見ることで、過酷な環境下でのトイレ設置の難しさや、ミカサのトイレの革新性をより深く理解してもらえたと感じています。

イノベーションを起こすということ

経済学者シュンペーターのイノベーションの定義「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なるやり方で新結合すること」を引用し、自社の事例を基に解説しました。

1つ目の事例として「プロダクトイノベーション」=新製品開発について話をしました。

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燃焼式トイレ「ミカレット」新製品開発に挑戦

1994年7月に販売開始したミカサの燃焼式トイレ「ミカレット」開発の背景には、建設現場向け仮設資材レンタル事業における価格競争激化がありました。

創業者が個人で会社を始めていたミカサは、当時大手企業との価格競争に苦戦し、利益を確保することが困難でした。そこで価格競争から脱却し安定した収益を確保するために、他社との差別化を図る必要がありました。誰も見向きもしないところにこそビジネスチャンスがあると考え目をつけたのが、当時劣悪な環境だった仮設トイレでした。

こうして開発されたのが、排泄物を燃焼処理する「ミカレット」です。回転ドラム内で排泄物を燃焼させるという仕組みで、競合他社がいない市場を開拓。価格競争に巻き込まれることなく販売・レンタル事業をスタートすることができました。これは、トイレに「燃焼」という技術を結合させることで、新製品開発(プロダクトイノベーション)を実現した事例です。

燃焼式トイレ「ミカレット」は、建設現場へのレンタルからスタートし、処理能力の高さが評価された結果、富士山や南極といった過酷な環境での需要を獲得。徐々に販売実績を積み重ねることができました。

しかし、新製品が売れるようになるまでには、開発開始から5~6年もの時間差がありました。ミカサのような資金力に乏しい小さな会社がイノベーションを起こすには、この販売までの時間差を乗り越えるための資金繰りが非常に重要になります。

バイオ分解式トイレ「バイオミカレット」 新市場開拓に挑戦

2つ目のイノベーションとして、バイオ分解式トイレ「バイオミカレット」によるODA※への参入についてもお話ししました。

これはJICS(日本国際協力システム)というODA業務に関わる一般財団法人からの相談がきっかけで始まった、バイオトイレのペルー共和国への輸出事業です。ODAを活用した新たな販路開拓、つまり「マーケットイノベーション」の一例です。

そして、このマーケットイノベーションも最初の問合せから現地設置・販売に至るまで3年以上かかりました。イノベーションを実現していくにはやはり、時間がかかるのです。

バイオトイレのミカサ_大分大学経済学部イノベーション学科_登壇7

JICSのペルー共和国に向けてのバイオトイレODA事業は、世界遺産のマチュピチュを含むペルー全域6箇所の国立自然保護区へバイオトイレを設置することでした。どの自然保護区も水が確保できず、下水道のような処理施設もなく、さらに電源も無いという場所でした。そこで白羽の矢が立ったのが、ミカサのバイオ分解式トイレ「バイオミカレット」でした。

「バイオミカレット」は、おがくずなどのバイオチップを利用し、微生物の力を使い人間のし尿を分解・蒸発処理する仕組みで、水を必要とせず、下水処理施設のような大規模設備が不要で、かつ浄化槽のように設置に大がかりな工事を必要としないトイレ処理システムです。

2014年、ODA専門商社の助けを得ながら、ミカサはペルー共和国へのバイオトイレ設置プロジェクトを受注することができました。しかし、海外、特にインフラ整備が不十分な途上国への輸出は、言葉の壁や文化の違い、輸送コストなどさまざまな課題がありました。そして、現地でのメンテナンス体制の構築が不可欠でしたが、幸運なことに、ODA専門商社の助けを得て、現地代理店を見つけることができ、メンテナンス体制構築の課題をクリアすることができました。

マチュピチュへの設置は見送られましたが、結果として、ペルー全土の国立自然保護区6箇所に合計16台のバイオミカレットが設置されることになりました。これは、小さな地方企業であるミカサにとって大きな挑戦でした。この事業を通して得た経験やノウハウは、その後のアフリカ・カメルーン共和国へのODA事業にも活かされています。

熱意と事業継続の重要性

イノベーションを起こすには絶対にやりきるという「熱意」と、イノベーションが軌道に乗るまでの長い期間に耐える為の「収益の柱」が必要です。

新製品や新販路の開発・開拓には数年かかるため、既存事業で安定した収益を確保しておく必要があります。ミカサの場合はレンタルボックス事業が、燃焼式トイレ「ミカレット」の開発という挑戦を支える大きな柱となりました。

また、設置場所の環境調査、仕様決定、輸送、現地での設置指導など、困難な状況にも社員一丸となって立ち向かう熱意と行動力も、イノベーション成功の鍵となりました。

イノベーションを起こすことは簡単ではありません。しかし、強い思いを持ち、諦めずに努力を続けることで必ず道は開けると信じています。

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京セラ創業者の稲盛和夫氏の著書『働き方』には、【イノベーションに至る「確かな地図」】という項目があり、そこには「日々の弛まぬ努力と創意工夫こそが、イノベーションへ至る「確かな地図」であり、成功に至る「確実な道」である」と書かれています。

一見当たり前に聞こえますが、イノベーションを起こすには、この「日々の弛まぬ努力と創意工夫」を継続していくための「なんとしてもこのようなものを作りたい!」という強烈な想いが不可欠なのだと思います。

質疑応答

講義後には、学生たちから活発な質疑応答がありました。

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  • 富士山頂への設置に関する具体的な作業時間や労力
  • ミカサの収益の柱
  • 雨天時の太陽光トイレの稼働
  • 会社の規模拡大に関する展望
  • 技術力維持の方法

など、多岐にわたる質問をいただき、一つひとつ丁寧に回答させていただきました。

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起業家を目指す学生からは、「地域貢献を目的とした事業を行っているものの、利益面で苦労し、周りの評価を得られず、モチベーション維持に悩んでいる」という相談がありました。

これに対し私は、「地域貢献や支援事業を継続するにはビジネスとして成立させることが重要であり、ビジネス化できれば、次の展開を考える面白さなどが見えてくる」とお伝えしました。

また、私自身もかつてこの自己処理型トイレ事業を引継ぎ、やり始めた当初は、大学を卒業してまでやるような仕事なのだろうか・・・と、トイレ事業に携わることに疑問を感じてモチベーションが低下していた時期がありました。しかし、上述した書籍『働き方』の中の「好きな仕事でなくとも、今やっている仕事を好きになる努力をすることが重要である。」という一説を読み、私もそのような考え方で仕事に取組み直しました。その結果、仕事の奥深さを知り、仕事が楽しくなり、より前向きな挑戦をしていくようになる・・・というように仕事に対する良いサイクルが回るようになりました。このような私自身の経験も学生の皆さんにお伝えし、講義を締めさせていただきました。

最後に

このような貴重な機会をいただき、大分大学経済学部の皆様、そして渡辺先生に心より感謝申し上げます。学生の皆さんと質疑応答できたことは、私にとってとても新鮮で刺激のあるものとなりました。

今回の講義を通して、学生の皆さんがイノベーションを起こすための具体的な方法や心構え、そして事業を継続していくことの難しさ、仕事に対する情熱を持つことの大切さを理解する一助になれば幸いです。

今後も学生と意見交換する場を大切にし、刺激を与え・与えられる企業でありたいと思います。


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